U・S・B!(DA PUMP風)
USBとよばれることが多すぎる「ユニバーサル・シリアル・バス」ですが、基本的にユーザーにわかりやすいように設計されています。しかしながら、その実態は複雑怪奇。非常にわかりにくいところです。
今回は、そのUSBについて話してまいりましょう。
目次
長くなりすぎたので目次用意してみました。
- トップ
- 目次
- シリアルバスについて
- USBで決められていること
- 端子形状
- USB Type-C(概要)
- USBのリビジョン
- USB Type-C
- 電源供給
- 〆
シリアルバスについて
先に、シリアルバスについて触れておきます。シリアルバスで使用するシリアル通信とは「1本のデータ伝送路で1ビットずつデータを転送する」方式のデータバスです。バスとはその「伝送路」を意味しています。
シリアルバスに分類されるのはUSBだけでなく、PCI ExpressやFireWireで知られるIEEE 1394、Serial-ATA(SATA)もその一種です。ちなみに単にシリアルバスというと「RS-232C」を指すことが多いです。
シリアルバスの対義語は「パラレルバス」です。パラレルバスのパラレル通信は、「複数の伝送路を使って並行して複数のデータを転送する」方式となっています。簡単なイメージとしては、シリアルバスが1車線、パラレルバスが複数車線ということになります。
シリアルバスの例 | パラレルバスの例 |
---|---|
|
|
一見するとシリアル通信よりもパラレル通信のほうが優れているように見えますが、伝送路間で同期を取る必要があったり、コード配線がとん雑になったりするなど、パラレルバスのデメリットが多く、汎用的な用途よりも限定的な用途に使われることが多いです。パラレル通信だった規格がシリアル通信に拡張されたり、変更される例もあります(ATA→SATAやPCI→PCI Expressなど)。
また、シリアル通信でも「デュアルレーン」などの要素があり、若干パラレル通信的な要素があるのも事実で、結構シリアル通信とパラレル通信の境界が曖昧な部分があります。
USBで決められていること
USBは主に「端子形状」「データ通信」「充電」の3つが定められており、更にUSBの標準化のためにデバイスグループなどが定められています。
流石に全てを紹介することは難しいので、今回は前述の3つに的を絞ってお話することにしましょう。
ちなみに、USBは特許として存在していますが、その使用料は無料。但し、USBデバイスの製造については、製造者を示すベンダーIDの申請が必要で、こちらは有料。USBの規格の策定を行っているのはUSB-IFという団体であり、Apple、HP、Intel、Microsoft、ルネサスエレクトロニクス、STマイクロエレクトロニクス、Texas Instrumentsが中心(取締役会のメンバー)となっています。
端子形状

USBには端子形状が多くあります。代表的なもので言うと、普通のUSB Standard-A(USB-Aとも称される事がある)や、スマートフォンなどに搭載されるUSB Type-Cがあります。更に、プリンタやスキャナ、MIDIキーボードなどの周辺機器に搭載されているUSB Standard-Bを含めて3つが主流ですね。
更に、ここにMicroタイプとMiniタイプが含まれています。
さすがに全てのコネクタ形状の画像を揃えるのは難しかったので、以下のページからWikipediaをご覧いただきたいと思います。
まあ、こんな感じ。ここから、各コネクタの特徴をまとめると以下の表のようになります。
形状 | ピン数 ~USB 2.0 |
最大ピン数 USB 3.0~ |
特徴 |
---|---|---|---|
Standard A | 4 | 9 | 一般的なUSB形状。必ずホスト。 |
Standard B | 4 | 9 | 一般的なUSB形状。必ず周辺機器。 |
Type C | ~14 | 24※ | 2014年に策定されたUSB形状。ホスト・周辺機器は限定されない。裏表が関係ないリバーシブルデザイン。 |
Mini-A | 5 | 小型のUSB形状。必ずホスト。 | |
Mini-B | 5 | 小型のUSB形状。必ずクライアント。 | |
Micro-A | 5 | 10 | Mini-Aよりも更に小型のUSB形状。必ずホスト。 |
Micro-B | 5 | 10 | Mini-Bよりも更に小型のUSB形状。必ずクライアント。一般的に「マイクロUSB」とよばれる形状。 |
と、ここにズラッと書きましたが、やや説明しなければならないものもあります。ただ、大きく分けることは可能です。
USBは端子の大きさで3分類、さらにデバイスのタイプで2分類、計6つに分類可能。ただしこれにはUSB-Cを含まないため、それを加えて計7つに分類可能です。ただ、メス側のみMicro-ABとMini-ABというのが存在するため、結局9つです。
端子の大きさの3分類とは「Standard」「Mini」「Micro」の3つです。「Standard」というのは標準的な大きさ、「Mini」は小さめ、「Micro」は更に小さめとなります。
デバイスのタイプの分類はAとBです。Aはホスト(親機)側、Bはペリフェラル(子機・周辺機器)側となります。
Type-Cに限っては、これら全てを包括しているので全くの別物として扱います。
それぞれの特徴をざっと見ていきましょう。
Standard-A(USB-A)
「Standard-A」(USB-A)は、一般的なUSB形状となります。よく皆様が「USB」というと、これがそれに当たると思います。
USB-Aの特徴としては、必ずホスト側になるということ。ホストとはつまりPCやコンピュータ本体側ということです。後述するStandard-Bが周辺機器(ペリフェラル)側に搭載される形状となりますので、これで端末の親子関係を識別したことになります。
例をあげた方がわかりやすいですね。PCとスキャナがあったとして、このとき親子関係、つまりホストとペリフェラルの関係はPCがホスト、スキャナがペリフェラルとなります。となれば、PCにUSB-Aが、スキャナにUSB-Bがそれぞれ搭載されます。これで、親子の関係が明確になりましたね。これがUSB-Aの特徴です。
そして、後述するUSB 3.0は、最低9本のピンが必要ですが、USB 2.0のUSB-Aは4本しか搭載されていません。そこで、USB-AではUSB 3.0に対応するため、従来のピンよりも奥(メスでは手前)に追加で5本のピンが新設されています。これは画像で見ていただきましょう。


この2つの画像は両方ともメス側ですが、USB 3.0の方にはピンが5つ追加されていることがわかります。ちなみに、この方法でのUSB 3.0への拡張は半ば無理があるようで、素早く刺さないとUSB 2.0の4-pinのみが認識されてUSB 3.0デバイスでもUSB 2.0と認識されるという問題があります。
「USB 3.0機器はゆっくり差すと2.0、素早く差すと3.0として認識される」って本当? →メーカー「本当です」 - ねとらぼ
なお、USB-Aを含め、USB-Cを除く全てのUSB形状は9-pinまたは10-pinを超えるピン拡張は難しい様で、これ以上の進化は見込めません。
USB Standard-B(USB-B)
「Standard-B」(USB-B)は、一応USB-Aと並ぶスタンダードタイプですが、USB-Aほど主流ではありません。前述の通りUSB-Bはペリフェラル側ですが、USB-Bはその形状から採用例は大型の周辺機器に限られており、プリンタやスキャナ、MIDIキーボード、HDDケースなどが採用例になります。カメラやスマートフォンなどの小型デバイスでは忌避され、MiniUSBやMicroUSBが利用される事が多いので、USB-Bと言われてもピンとこない人もいるかも知れませんね。
USB-BもUSB 3.0の拡張が行われていますが、USB-Aのそれとは異なり形状ごと変わっています。前述の通り、USB 2.0とUSB 3.0には必要なピン数に違いがあります。USB-Aではピンを無理やり増やすことでUSB 3.0に対応しましたが、USB-Bではその方式での拡張は困難だったようで、コブがついたような形でピンが増えています。

MiniUSB
「MiniUSB」は、小型デバイス向けに小さくされたUSBです。使用例は小型デバイスですが、スマートフォンなどではMicroUSBが好まれる傾向があり、一概に普及しているかと言われればそういうわけではありません。
MiniUSBにもMini-AとMini-Bがあり、Standardと同じようにAがホスト側、Bがペリフェラル側となっています。
MiniUSBはUSB 1.1で策定されUSB 2.0に対応しましたが、USB 3.0には対応していません。
ピンの数は5-pin。USB Standardの2種に加えてIDピンが追加されています。これは、USB On-The-Go(OTG)のためのピンです。
OTGとは、簡単に言えばデバイスがホストかペリフェラルかを切り替えられる事ができる機能です。デバイスによっては場合によってホスト(親機)になる場合と、ペリフェラル(子機)になる場合があります。例えばスマートフォンは、PCと接続したときはPCの子機のように振る舞いますが、マウスやキーボードを接続したときは親機として振る舞います。これがOTGです。
で、そのホストかペリフェラルかを切り替えるときにIDピンを用います。IDピンを接地(GND)としてショートさせればホストとして、IDピンを介さず従来のGNDに信号を流せばペリフェラルとして動作する といった感じです。
ちなみに、MiniUSBにはAとBに加えてメス側のみMini-ABが存在しています。これはOTGが前提でAとBの両方のオスに対応した端子となっています。
MicroUSB
MicroUSBは、MiniUSBよりも後に登場した規格で、より薄く小さくなっています。MicroUSBもMicro-A、Micro-B、そして両方のオスに対応するMicro-ABが存在しています。
MicroはUSB 2.0で初めて登場し、Miniを実質的に置き換え、USB 3.0まで対応しています。ピンアサインもMiniと同じIDを加えた5-pinで、USB 3.0版は10-pinとなります。
IDピンがあることからおわかりいただけるかもしれませんが、OTGに対応しています。
そして、MicroもStandard-Bと同様にUSB 3.0の拡張をやや無理やり行っています。ちょうど私の手元にUSB 3.0版のMicro-B端子があるので画像で見ていただきます。

このように従来のMicro端子の横に拡張しています。まるで板チョコレートのような拡張ですが、新たに拡張された部分は「Side Car」ともよばれています。
USB Type-C(概要)
USBは大方「Standard」「Mini」「Micro」の3つとそれぞれにあるA端子とB端子がありました。しかし、そのどれにも属さない新しい端子が「USB Type-C」(USB-C)です。
USB-Cは2014年に策定され、現在はこれまでの全てのUSB端子を置き換える物となっています。
USB-Cは最大22-pinで構成され、USB 2.0以降の全てのUSBに対応しています。実は、このUSB-Cがものすごくわかりにくいのですが、これを説明するよりも先にUSBのリビジョンを説明する方がいいので、先にそっちから紹介します。
USBのリビジョン
USBはこれまでに「USB 2.0」や「USB 3.0」などの世代が登場しています。これらはリビジョンとも呼ばれています。ついこないだまでは「バージョン」と紹介できましたが、ちょっとだけニュアンスが違います。
それぞれのUSBのリビジョンの特徴を見てみましょう。
旧名称 | ブランド | 新名称 | 最大転送速度 | 転送方式 | 登場年 |
---|---|---|---|---|---|
USB 1.0 | 1.5Mbps(Low) 12 Mbps(Full) |
半二重 | 1996 | ||
USB 1.1 | Low-Speed Full-Speed |
1.5Mbps(Low) 12 Mbps(Full) |
半二重 | 1998 | |
USB 2.0 | High-Speed (Hi-Speed) |
480 Mbps | 半二重 | 2000 | |
USB 3.0 USB 3.1 Gen 1 USB 3.2 Gen 1x1 |
SuperSpeed | USB 5Gbps | 5 Gbps | 全二重 | 2008 |
USB 3.1 Gen 2 USB 3.2 Gen 2x1 |
SuperSpeed+ | USB 10Gbps | 10 Gbps | 全二重 | 2013 |
USB 3.2 Gen 1x2 | Enhanced SuperSpeed | USB 10Gbps | 10 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2017 |
USB 3.2 Gen 2x2 | Enhanced SuperSpeed | USB 20Gbps | 20 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2017 |
USB4 Gen 2x1 | 10 Gbps | 全二重 | 2019 | ||
USB4 Gen 2x2 | USB 20Gbps | 20 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2019 | |
USB4 Gen 3x1 | 20 Gbps | 全二重 | 2019 | ||
USB4 Gen 3x2 | USB 40Gbps | 40 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2019 | |
USB4 Gen 4x2 | USB 80Gbps | 80 Gbps 120 Gbps(非対称) |
全二重 デュアルレーン 非対称通信 |
2022 |
では個別にそれぞれの規格の特徴を見ていきましょう。
USB 1.0〜USB 2.0
旧名称 | ブランド | 新名称 | 最大転送速度 | 転送方式 | 登場年 |
---|---|---|---|---|---|
USB 1.0 | 1.5Mbps(Low) 12 Mbps(Full) |
半二重 | 1996 | ||
USB 1.1 | Low-Speed Full-Speed |
1.5Mbps(Low) 12 Mbps(Full) |
半二重 | 1998 | |
USB 2.0 | High-Speed (Hi-Speed) |
480 Mbps | 半二重 | 2000 |
USB 1.0は初めて登場したUSBです。12 Mbpsの半二重通信が可能でした。
半二重通信とは、一度に通信できる方向が片方向のみの通信です。道路に例えると、よく1台分の幅しかないトンネルや工事中などに行われる相互通行を想像していただければと思います。
USB 1.0とUSB 1.1の違いはそれほど多くはありません。USB 1.0はUSBの超初期段階で実験的な部分が大きく、USB 1.1ではその段階で発生した不具合を修正したマイナーアップデートとなります。USB 1.0では商用的な展開は非常にまれであったものの、USB 1.1はiMacをはじめとしたコンピュータが採用したことで本格的に市場に展開されはじめます。
USB 1.0/1.1は最大12 Mbpsでの通信に対応していますが、モードが2つあり「Full-Speed」モードが12 Mbps、「Low-Speed」モードが1.5 Mbpsとなります。USB 2.0では更に「High-Speed」モードが追加され、これは最大480 Mbpsの通信に対応しています。ただし、USB 2.0でもHigh-Speedモードはあくまでもオプション扱いであるため、マウスやキーボードなど、転送帯域を必要としない場合は、対応しない場合もあります。
また、USB 2.0登場時にUSB 1.1の内容を統合したため、基本的にUSB 1.1と同じ機能をUSB 2.0も有していることになります。基本的に、USBは後方互換性を有しており、USB 2.0はUSB 1.1にも対応しました。
これら3つのバージョンは、USBの形状とUSBの通信規格の両方が規格として含まれており、USB 1.1では新たにMiniが、USB 2.0ではMicroがそれぞれ追加されました。
USB 3.0〜USB 3.2
旧名称 | ブランド | 新名称 | 最大転送速度 | 転送方式 | 登場年 |
---|---|---|---|---|---|
USB 3.0 USB 3.1 Gen 1 USB 3.2 Gen 1x1 |
SuperSpeed | USB 5Gbps | 5 Gbps | 全二重 | 2008 |
USB 3.1 Gen 2 USB 3.2 Gen 2x1 |
SuperSpeed+ | USB 10Gbps | 10 Gbps | 全二重 | 2013 |
USB 3.2 Gen 1x2 | Enhanced SuperSpeed | USB 10Gbps | 10 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2017 |
USB 3.2 Gen 2x2 | Enhanced SuperSpeed | USB 20Gbps | 20 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2017 |
USB 1.1からUSB 2.0のアップデートが比較的小規模であったのに対して、USB 3.0は非常に大きいものになっています。USB 1.1とUSB 2.0は信号の改良による高速化が中心でしたが、USB 3.0では違ったベクトルでの高速化も果たされています。
USB 3.0は「SuperSpeed」というブランドがつけられ、最大転送速度は5 Gbps(理論値)となりました。ただし、8b/10bエンコード方式の影響により、25%のオーバーヘッドが発生するため、実効値は最大4 Gbpsとなっています。
USB 3.0の通信は全く新しいものになりました。まず第一に、通信方式が半二重から全二重となりました。半二重が相互通行出会ったのに対して、全二重は片側1車線での通信が可能になった形、すなわち同時に双方向の通信が出来るようになりました。これに伴い送受信にそれぞれプラスとマイナス用のピンが必要となりました。更に、SuperSpeed用の通信線とHigh-Speed用の通信線は共有ではありません。よって、USB 3.0では新たに4-pinとGNDが必要になっており、少なくとも合計9-pinのピンが必須となっています。
これが、前述のUSB-Aへの無理やりな拡張や、MicroへのSide Carの追加、USB-Bへのコブの追加につながっています。
そして、USB 3.xといえば、その複雑さが特徴です。
USB 3.0のあとにUSB 3.1が策定されましたが、このときUSB 3.0の内容も含んで新たに策定した影響で、USB 3.0とUSB 3.1に全く同じ使用のポートが追加されるという状況が発生しました。どういうことかというと、USB 3.0をUSB 3.1 Gen 1としてもう一度同じ仕様で策定したのです。
結果として、同じ仕様のUSBに対して「USB 3.0」と「USB 3.1 Gen 1」という2つの呼称が追加される事になりました。
さらにさらにややこしいのが、USB 3.2では、USB 3.0とUSB 3.1をもう一度策定したことにあります。結果として、以下の状態になりました。
- USB 3.2 Gen 1x1 = USB 3.1 Gen 1 = USB 3.0(5 Gbps)
- USB 3.2 Gen 2x1 = USB 3.1 Gen 2(10 Gbps)
とまぁ、USBの策定方式は問題となっているのです。実際に、一部のメーカーはUSB 3.0相当の5 Gbpsの速度のまま「USB 3.2」の呼称を利用して宣伝するなどが行われました。
結局、USB 3.xの呼称は7つほどありますが、実際に存在しているのは4つだけです。
話を戻しまして、USB 3.1 Gen 2の話をしましょう。USB 3.1 Gen 2は、「SuperSpeed+」と名付けられ、最大転送速度は10 Gbpsと2倍になっています。また、エンコード方式は128b/132bに変更されており、オーバーヘッドが3%に削減されており、実効速度は9.7Gbpsと非常に高速になっています。
USB 3.2
セクションを分けまして「USB 3.2」の話をしましょう。
USB 3.2は「デュアルレーン」機能を新たに追加したものです。デュアルレーンとは、伝送路を増やすということになります。USB 3.0で全二重に対応しましたが、USB 3.0/USB 3.1ではシングルレーンのみ策定されていました。またまた車線で例えると、片側1車線の2車線しかなかったのです。
デュアルレーンでは、これを片側2車線の4車線に拡張するというものになります。こうすることで、伝送速度はそのまま倍になります。
ただ、デュアルレーンにするには新たにピンを4-pin増やす必要があります。前述の通りUSB-Cを除きこれ以上ピンを増やすことは現実的ではありません。ということで、USB 3.2は基本的にUSB-Cのみの策定となります。これによって、実質的にUSB-Aを含めてC以外のUSB形状が対応するUSB規格はUSB 3.1が最後になります。
USB-Cは22-pinありますので、まだ余裕があります。というか多分、将来的にデュアルレーンにすることを想定していたのだと思います。
USB 3.2のデュアルレーン仕様は「USB 3.2 Gen 1x2」のように策定されました。この場合、USB 3.1 Gen 1(= USB 3.0)をデュアルレーン化したことになります。USB 3.1 Gen 1は5 Gbpsですので、転送速度はそのまま倍の10 Gbpsとなります(まあ、USB 3.2 Gen 1x2より、USB 3.1 Gen 2のほうが実効速度速いし、コストも低いのでGen 1x2の採用例は限定的ですけどね)。
そして、USB 3系で最上位となる規格は、USB 3.1 Gen 2をデュアルレーン化した「USB 3.2 Gen 2x2」で20 Gbpsとなります。
また、USB 3.2もまた、USB 3.1の範囲を再度策定しています。これらはシングルレーンですので、USB 3.1 Gen 1は「USB 3.2 Gen 1x1」、USB 3.1 Gen 2は「USB 3.2 Gen 2x1」としてそれぞれ定義されています。
USB4
USB4の前史(Thunderboltの話)
USB-Cの節でまた詳しくお話しますが、USB-Cには従来のピンの役割に上書きして別のプロトコルを載せることが可能です。例えば、USB SuperSpeedのピンをHDMIやDisplayPortに書き換えることで、USBの代わりに映像出力を行えたりします。これを「Alternative Mode」呼びます。
そして、2011年にIEEE 1394の後継としてIntelとAppleから投入されたThunderboltは、2015年に「Thunderbolt 3」へとアップデートされ、このAlternative Modeを利用してUSB-C形状を採用する事となりました。
Thunderboltについても後の節で詳しく紹介しますが、USBよりも上位の汎用ポート(USBの上位互換)という立ち位置で、USB 3と互換性があったThunderbolt 3の伝送速度は40 Gbpsとなっています。
USB4の特徴
旧名称 | ブランド | 新名称 | 最大転送速度 | 転送方式 | 登場年 |
---|---|---|---|---|---|
USB4 Gen 2x1 ※1 ※2 | 10 Gbps | 全二重 | 2019 | ||
USB4 Gen 2x2 ※2 | USB 20Gbps | 20 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2019 | |
USB4 Gen 3x1※ | 20 Gbps | 全二重 | 2019 | ||
USB4 Gen 3x2 | USB 40Gbps | 40 Gbps | 全二重 デュアルレーン |
2019 | |
USB4 Gen 4x2 | USB 80Gbps | 80 Gbps 120 Gbps(非対称) |
全二重 デュアルレーン 非対称通信 |
2022 |
※1 USB4は原則デュアルレーン必須だが、シングルレーンは一時的に許可
※2 USB 3.2にも同様の名称の規格はあるが、別物。
Intelは2019年にこのThunderbolt 3の仕様をUSB-IFに提供し、これを基にした「USB4」が策定されました。ただし、これにはThunderboltのプロトコル本体は含まれていません。
説明の前にUSB4の特徴を抑えておきます。
- 最大40Gbpsの帯域を提供
- デュアルレーンが前提
- USB-Cのみの対応
- トンネリング技術(後述)
- DisplayPortによる映像出力が必須に
USB4は独自の通信プロトコルを持たず、最大40 Gbpsの伝送路を提供するという事になっています。実際にそこに流れるデータのプロトコル自体は、USB 3.2であったり、PCIeであったりするわけです。
道路とそこを走る車に例えると、USB 3.2まではその両方を提供していましたが、USB4では道路のみを提供し、そこを走る車自体はUSB4では提供しません。
この仕組みを実現するにあたって、USB4では「トンネリング」技術が新たに採用されています。これは、USB4のコントローラ(ルータ)を利用して、複数のプロトコルで通信することが出来るものです。つまり、USB4は物理的な部分しか提供しません。
先ほど、USB4を道路と車に例えましたが、トンネリングはトラックであり、このトラック自体はUSB4が提供します。トラックの中にはUSBやDisplayPort、PCIeといったプロトコルが載っており、USB4が提供するトラックで接続先に提供されます。
トンネルでサポートされているプロトコルの例は次のとおりです。
- USB 3.2
- DisplayPort
- PCI Express
- Ethernet
一方でUSB-CにはAlternative Modeも引き続き存在しています。こちらでは、ThunderboltやDisplayPort、DisplayLink、HDMIなどが引き続き存在しています。トンネリングとの違いは、USB4を介在しないことです。
トンネリングでは、USB4のルータ(集積所)を通ってUSB4が提供するトラックで運ばれますが、Alternative Modeは、自家用車で相手まで届けるという感じになります。
そもそもAlternative ModeはUSB-Cの対応規格が、USB 3なのかUSB4なのかはあまり関係なく、どちらかというとホスト側が対応しているかというのと、ピンの数が足りているかのほうが重要です。また、一応Alternative Modeよりもトンネリングのほうが、効率的ではあるらしいです。
USB4とThunderbolt 4の違い
USB4はThunderbolt 3がベースとなっています。そして、Thunderbolt 4はUSB4がベースとなっています。
では、USB4とThunderbolt 4の違いは何でしょうか。まず第一に、Thunderbolt 4にはThunderboltプロトコルが載っています。これはUSB4との最大の違いです。
それ以外でいうと、USB4は20 Gbpsなどの遅い帯域の規格を提供したり、オプションが設定されているといったある種の「救済措置」が用意されているのに対して、Thunderbolt 4にそれはありません。つまりは、Thunderbolt 4は全部入りのUSB4ということになります。
別の視点から言えば、USB4はオープンになっているのでコントローラ等はいろんな企業が作れますが、Thunderboltは引き続きIntelとAppleが開発し続けているため、Intel製のチップが必要になり、Intelの認証が必要になりますね。そういった意味でもUSBよりも縛りがきついということが出来るでしょう。
USB4 Version 2
2022年、「USB4 Version 2」が発表されました。これは、信号に新たにPAM-3という信号方式を採用した規格です。
PAM-3は、3つの電圧レベル(+1/0/-1)を使用する信号方式です。近年ではメモリや光ケーブルでも採用例があります。
USB4 Version 2は、レーンあたり最大40Gbps、対称通信であれば双方向最大80 Gbpsの転送速度を提供します。
わざわざ「対称通信であれば」と書き加えましたが、これには理由があります。USB4 Version 2では、非対称通信に対応しています。
デュアルレーンを説明するときに、片側2車線の道路だという風に説明しました。しかし、ディスプレイ接続など、片方向の通信のみを強化したい場合、この車線の片方を多めに割きたいですよね。ということで非対称通信に対応しました。
どういうことか。双方向4車線は変わらず、どちらかの方向を3車線に、逆を1車線にすることで、片方向の速度を向上させようというのが非対称通信です。USB4 Version 2の場合、レーンあたり40 Gbpsの帯域なので、片方向120 Gbps、逆方向40 Gbpsの帯域を提供する事ができますね。
USBの名称変更
ここまで紹介してきた通り、USBは複雑怪奇な道のりを辿っています。流石にこれについてはUSB-IFも理解しているようで、帯域を基にした新しい名称を導入しました。
例えば、USB 3.2 Gen 1(= USB 3.1 Gen 1/USB 3.0)は新たに「USB 5Gbps」となります。その他も以下のとおりです。
新名称 | 旧名称 |
---|---|
USB 5Gbps |
|
USB 10Gbps |
|
USB 20Gbps |
|
USB 40Gbps |
|
USB 80Gbps |
|
まあ、なんとなくこれを見ていただければ分かる通り、USB4とUSB 3.xやら、シングルレーンとデュアルレーンやらをごちゃまぜにしちゃってるので、結局わかりにくいんだよな・・・と感じる次第でございます。
USB Type-C
ここまで長らくUSBのリビジョンについて解説してきました。では、話を戻しまして、USB-Cについて見ていきます。
前述の通りUSB-Cは、これまでの全てのUSBを置き換える形状です。そのため、全てのUSBの特徴を有しています。
- ピンの数は最大(22-pin)
- ホストにもペリフェラルにもなる
- MicroUSBなみの小ささ
- USB4まで対応
特にピンの数は、他の形状が10-pinであるのに対して、遥かに超えるピンの数を有しているのです。
ピン配列

こちらの画像は、Wikimediaからお借りしたUSB-Cのピン配列です。
USB-Cには片側12-pin、計24-pinのピンがあります。両面のピンは基本的に点対称となっていますが、USB 2.0に限っては両面に必要なわけではないため、メス側で片面の2-pinが欠損しており、有効なピンの数でいうと22-pinとなっています。
画像は、それぞれのピンの役割が略で載っているだけなので、その略の意味をまとめておきましょう。
略 | リマップ | 役割 |
---|---|---|
GND | 不可 | 接地 |
TX1+/TX2+ | 可 | USB 3.x(SuperSpeed)用の送信のプラス極。2はデュアルレーン用 |
TX1-/TX2- | 可 | USB 3.x(SuperSpeed)用の送信のマイナス極。2はデュアルレーン用 |
VBUS | 不可 | 電力供給 |
CC | 可 | Configuration channel。主に接続に必要な情報(USB-PD用に給電に必要な情報など)をホスト間で通信するためのピン。 メス側は片面のみ実装。 |
Vconn | 可 | ケーブルやeMarkerに対する電力供給を行う。 メス側は片面のみ実装。 |
D+ | 不可 | USB 2.0用のプラス極。メス側は片面のみ実装。 |
D- | 不可 | USB 2.0用のマイナス極。メス側は片面のみ実装。 |
SBU | 可 | サイドバンド用。主にAlternative Modeのためのピン。役割に定めはなく、用途に応じて上書きされる。 |
RX1+/RX2+ | 可 | USB 3.x(SuperSpeed)用の受信のプラス極。2はデュアルレーン用 |
RX1-/RX2- | 可 | USB 3.x(SuperSpeed)用の受信のマイナス極。2はデュアルレーン用 |
大まかに説明しますと、TXとRXはUSB 3.xの通信を行うためのピンです。シングルレーンのみ対応の場合は、片側のTX/RXのピンが欠損しています。
何度か説明しています通り、USB 3.0以降、USB 2.0とUSB 3.xはそれぞれ独立したピンとして存在しています。そして前述の通り、USB 2.0はデュアルレーンに対応していませんので、メス側ではD+/D-が欠損しています。
Vbusは、電力供給のためのピンです。バスパワーやUSB-PDに利用されます。GNDは接地です。
VconnピンとCCピンはそれぞれUSB-PDに関わるピンですので後述。今からは、SBUピンと関係のある「Alternative Mode」について詳しく見ていきましょう。
Alternative Mode
USB-Cは、そのピンの多さを利用してUSB以外のプロトコルに対応しています。これは、USB4のトンネリングとは異なるものです。
USB4のトンネリングとの違いを改めて説明しておくと、トンネリングはUSB4のルータを介して通信するのに対して、Alternative Modeはコネクタのピン自体を他のプロトコルに塗り替えてしまうというものになります。
塗り替えると表現した通り、Alternative Modeでは、USB-Cのピンの役割を塗り替える事ができるのです。リマップといいます。
リマップできるピンは決まっており、SBUとTX/RX、CCとVconnの計12-pinがそれぞれリマップ可能なピンです。逆に、Vbus、GND、D+/D-はリマップすることは出来ません。
では、Alternative Modeを通じてUSB-Cで動作するプロトコルを見てみましょう。
DisplayPort Over USB Type-C
Pin | 用途 | |
---|---|---|
A1 | B1 | 接地 |
A2 | B2 | DP or TX+ |
A3 | B3 | DP or TX- |
A4 | B4 | Vbus |
A5 | B5 | CC/Vconn |
A6 | x | D- |
A7 | x | D+ |
A8 | B8 | DisplayPort |
A9 | B9 | Vbus |
A10 | B10 | DP or RX+ |
A11 | B11 | DP or RX- |
A12 | B12 | 接地 |
「DisplayPort Over USB Type-C」、長いのでDP Over USB-Cとしますが、これはAlternative Modeの代表例となるでしょう。
そもそもUSB4ではこれが大前提となっており、DisplayPort 2.0への対応が必須です。
DP Over USB-Cは、SBUと2組のUSB 3.xピンのうち1組は必ずリマップされますが、出力する解像度・リフレッシュレートによって、もう一組のUSB 3.xピンがリマップされるかが変わります。
例えば、4K 30Hzを出力する場合、2組のUSB 3.xのうち1組のみDPにリマップされますが、4K 60Hzを出力する場合には2組ともがリマップされるため、DPとUSB 3.xを同時に使うことが出来ません。
他方で、Vconn/CCはリマップされないため、USB-PDと併用する事は可能で、加えてリマップに対応しないUSB 2.0についても併用できます。
Thunderbolt Alternative Mode
Pin | 用途 | |
---|---|---|
A1 | B1 | 接地 |
A2 | B2 | Thunderbolt TX+ |
A3 | B3 | Thunderbolt TX- |
A4 | B4 | Vbus |
A5 | B5 | CC/Vconn |
A6 | x | D- |
A7 | x | D+ |
A8 | B8 | Thunderbolt SBU |
A9 | B9 | Vbus |
A10 | B10 | Thunderbolt RX+ |
A11 | B11 | Thunderbolt RX- |
A12 | B12 | 接地 |
Thunderboltは、Thuderbolt 3以降でAlternative Modeで動作します。
ThunderboltはUSB 3.xピン全てとSBUをリマップします。ただ、Thunderbolt自体にUSBとDisplayPortのプロトコルが含まれているため、USBもDisplayPort利用可能です。
また、ThunderboltはPCIeのプロトコルも含んでいるため、PCIeが利用可能。
なお、Thunderboltの場合、実際にデータ転送で使える帯域は22Gbps(Thunderbolt 3でPCIe x2接続の場合16Gbps)となっています。残りの帯域はDisplayPortでの映像出力用になっています。映像出力は、1ポートで4Kを2台まで、あるいは5Kを1台までとなっています。
その他のAlternative Mode
この2種類以外にも、HDMIのAlternative ModeとDisplayLinkのAlternative Modeなどが存在していますが、それほど主流ではないか放棄されています。
特にHDMIのAlternative Modeはどんな解像度でもUSB 3.xと排他的であり、DisplayPortを変換して使うほうが圧倒的にメリットがあります。
電源供給
さて、USBの形状とリビジョンについて長々とお話してきましたが、最後の項目に参りましょう。
最後は給電についてです。USBには、ホスト側からの給電でペリフェラル側の動作電源を確保するバスパワー自体は存在していましたが、Battery ChargingやUSB PowerDelivery(USB-PD)といった給電用の規格も定められています。
USB 1.0~2.0では、5V/500mAの2.5W給電が提供されていました。USB 2.0では更に「Battery Charging」(BC)というUSB給電用の規格が拡張されており、5V/最大1.5Aの最大7.5Aの給電に対応しました。ただ、当時の給電はデータ通信速度とのトレードオフになっており、LowあるいはFull-Speedで1.5Aの給電を提供していましたが、480MbpsのHigh-Speedモードでは、900mAに制限されていました。
そもそも当初のUSBはP/S2などの規格を置き換えることを目的としていたため、大きな電力を要求するデバイスよりも、小規模なロジックを動かすための電力をバスパワーで提供するということを想定していたため、それほど大きな電力を扱うようには出来ていませんでした。
BCでは、データ通信と同時に給電できる「Charging Downstream Port」(CDP)と、給電のみを行う「Dedicated Charging Port」(DCP)の2つが用意されており、単に給電を行うのみの場合はDCPを利用出来るようになっています。
USB-PD Rev 1のパワープロファイル一覧
電圧 | 電流 | 電力 |
---|---|---|
5V | 3A | 15W |
12V | 1.5A | 18W |
12V | 3A | 36W |
12V | 5A | 60W |
20V | 3A | 60W |
20V | 5A | 100W |
2012年にUSB Power Delivery(USB-PD)が新たに策定されました。当初のUSB-PD(Rev. 1.0)は、USB-AとUSB-Bによる給電を策定しており、「パワープロファイル」として15W(5V/3A)、18W(12V/1.5A)、36W(12V/3A)、60W(12V/5Aまたは20V/3A)、100W(20V/5A)が用意されていました。なお、Micro-Bを使用する場合、最大20V/3Aの60Wまでの対応にとどまりました。
2014年には、USB-Cに対応した現在のものに近い形の「USB-PD Rev 2.0 Ver 1.0」がリリースされました。
USB-PD Rev. 2.0 Ver 1.2
そして、「USB-PD Rev. 2.0 Ver 1.2」が2016年に登場。このバージョンから固定化された「パワープロファイル」が廃止され、新たに「パワールール」という規定に変わりました。パワールールでは5V/9V/15V/20Vという4つの電圧レベルを策定、条件の中で電流が(ある程度)自由に決められるようになったことにより、0.5W〜100Wの電力をサポート出来るようになりました。なお、電流は現在に至るまで5.0Aが最大値であり、これを超えることは規格上は出来ません。
ただし、パワールールには給電側に対して重要な決め事があります。
ややこしい話をしましょう。USB-PDは充電器が対応する出力(W)にあわせて出力しなければならない電圧・電流が決まります。例として60W充電器を挙げますと、20V/3Aを出力するとともに、15V/3A・9V/3A・5V/3Aに対応する必要があります。わかりやすく言うと、「その充電器が供給する電圧よりも下の電圧レベルも、同じ電流(15V以下は最大3A)で出力出来るようにしろ」という話です。
加えて、これらの電圧レベル以外の電圧も20V以内であれば「Optional Voltage」としてサポートすることが可能となっています。
USB-PD Rev 3のパワールール一覧
電圧 | 許容される電流範囲 | 供給電力範囲 |
---|---|---|
5V | 0.1〜3.0A | 0.5〜15W |
9V | 1.7〜3.0A | 15〜27W |
15V | 1.8〜3.0A | 27〜45W |
20V | 2.25〜5.0A | 45〜100W |
また、このバージョンからUSB-PDはUSB-C専用となりました。この理由は、ホストとデバイス側で電圧を調整させる必要があり、そのためにはVconnとCCが必要になるためです。USB 2.0かつ3A以下で通信・給電する場合はこの規定を逃れますが、それ以上で接続する場合には、E-Markerが必須となります。
E-Markerはケーブルに搭載されたチップで、製品情報やベンダー、対応するUSB規格や利用可能な電圧・電流などの情報を有しています。USB-CのVconnピンは、このE-Markerチップに対して給電を行い、CCピンはE-Markerチップと通信を行います。これらの機能はUSB-Cを除く形状では実現出来ておらず、USB-C限定となっているのです。
つまり、E-Markerを搭載していないケーブル(iPhoneなどに付属)は、最大3Aの給電しか行えず、理論上60W給電が限界になるのです。ケーブルを買うときに注意しましょう。
USB-PD Rev. 3.0
「USB-PD Rev. 3.0」では、「Programmable Power Supply」(PPS)が新たに用意され、使用中に電圧を20mVずつ、電流を50mAずつに細かく調整することが可能になりました。あくまでオプションでありPPSに対応しない場合は従来の固定電圧で対応可能です。
ただ、あくまでPPSはあくまでも「使用中に給電能力の範囲内で調整する」機能であるため、充電器自体の仕様を細かく制御する事はできず、固定電圧の対応は前提です。すなわち、前述の下位電圧レベルの対応も必須です。どういうことかというと、充電器のカタログスペックはこれまで通り5V/9V/15V/20Vにする必要がありますが、PPS対応デバイスに給電する際には、設定した範囲内で電圧・電流調整が出来るということになります。
USB-PD Rev. 3.1とUSB-PD EPR
そして、現在最新の「USB-PD Rev. 3.1」では、5V/9V/15V/20Vの「Standard Power Range」(SPR)電圧に加えて、28V/36V/48Vの「Extended Power Range」(EPR)電圧が対応し、最大48V/5Aの240W給電に対応しました。なお、EPRは最低でも3Aの出力が必須であり、20Vを除くSPRの全ての出力に対応する必要があります。
EPRのパワールール一覧
電圧 | 許容される電流範囲 | 供給電力範囲 |
---|---|---|
28V | 3〜5A | 84〜140W |
36V | 3〜5A | 108〜180W |
48V | 3〜5A | 144〜240W |
USB-PD Rev. 3.2とAVS
USB-PD Rev. 3.0ではOptional Voltageは20V以内となっていましたが、「USB-PD Rev. 3.2」では9V以内に変更されました。
9V以上の中間電流は新たに規定された「Adjustable Voltage Supply」(AVS)を使うことになります。AVSは、電圧を100mVずつ調整する機能です。PPSが電圧・電流を調整するのに対して、AVSは電圧のみです。
また、27Wを超える電力を出力する事ができる充電器ではAVSの対応が必須となりました。PPSはオプションですが、こちらは必須であるというのは大きな違いかもしれません。
〆
と、まあこんな感じでまとめてみました。漏れとかあるかもしれませんが、だいたいUSBの基礎は網羅出来たはずです。
戯言史上どころか、このHPのコンテンツ史上、最もサイズがでかいコンテンツとなりましたが、誰かの役に立てれていれば幸いですね。